マダガスカル訪問・交流参加者の得たもの
参加者それぞれの専門が異なるため、得たものは、少しずつ異なります。そこで、各参加者が、自分が得た最も大きな成果について語ります。
経済学部経営学科企業経営コース4年
私がマダガスカルを訪問して得たことの一つは、思い描いていた貧困国の負のイメージや統計数値と、現実との間のギャップを認識することが出来たことです。もちろん、イメージと合致する社会も存在するかもしれませんが、貧困国の全てがそうだというわけではないのです。
「開発」というと、途上国の困っている人たちに、先進国の人が救いの手を差し伸べるといったよう
な、強者が弱者を救うようなイメージを先進国の人々は持ってしまいがちです。そもそも、「先を進んでいる国」という意味を持つ「先進国」という呼び名に違
和感を持つべきなのかもしれません。実際の開発は、そのようなものではなく、「問題を解決するためには何をするべきか、同じ視線で議論をして、決定してい
くこと」だと、今回マダガスカルを訪問し、交流してみて実感しました。
また、マダガスカルの人たちに会う以前の私は、貧困という悪を憎む義憤といいますか、弱きを助け
る正義心といいますか、そういった心情をモチベーションの原動力として開発に関わろうとしていたように思えます。マダガスカルの人たちに会って、一緒にご
飯を食べ、意見を交換し合って、気づいたら以前のような考えは無くなってしまいました。今はただ、単純にその恩返しがしたいのです。
現地を訪れ、「開発というものは肩肘張って関わるものではなく、一緒に何かを楽しんで行いたいと
いう気持ち、あるいは恩返しのように、もっと明快でポジティブな動機で関わってよいものなのだ」という考えが私の中に生まれました。このような、精神面で
の大きな成長が、私にとって一番の収穫です。私は今後、何かしらの形で途上国の問題に関わっていくと思いますが、マダガスカルで見て、聞いて、感じたこと
を、日々活かしていきたいです。
工学部建設学科社会基盤コース4年
アンタナナリボ大学の学生と交流する機会がありました。そこでは、私たちが日本の文化、社会、自然、歴史
などについて写真を使用しながら紹介しました。その発表に対して、学生の方々から英語で質問がありました。私たちは、その質問に対して、四苦八苦しながら
英語で対応しました。彼らはマダガスカル語、フランス語、英語を話し、さらに日本語を勉強しているとのことでした。交流会終了後、十数名の学生が私たちの
メールアドレスを聞きに来てくれました。その時に、アドレス交換をした学生とは、半年過ぎた今でもメール交換をしています。彼らの学業への意欲に対して、
私も学ぶことへ奮起されています。
また、今回の訪問では、開発問題に携わっている団体を訪問し、現地での開発の実態に触れることが
できました。開発の問題は、現地の自然状況、文化、歴史、社会状況に根付いていることがわかりました。各種団体の開発問題への取り組みの話を聞くことに
よって、現地の歴史や文化、社会状況などに触れることができました。開発の主人公は、現地の人々であるため、開発を良きものとするためには、彼らの背景を
理解することが不可欠となります。
今回の訪問で出会ったJICAの青年海外協力隊員の方が「最初私もマダガスカル人になろうと思った。でも、彼らはマダガスカル人で、私は日本人であることは変わらない。私は日本人で、私に出来ることをしよう。」と言っていたことが、私の心に残っています。
農学部農業生産科学科2年
私がマダガスカル訪問で学んだことは、彼らの国の文化・風土・自然・生活様式そのものです。日本の生活や
地図の上の勉強では得ることのできない新たな発想を私にもたらしてくれました。例えば訪問したマダガスカル政府関係者の方のお話や現地のNGO、大学の先
生や学生、それぞれの立場から具体的に自国について、関心事について考えを聞けたことは、大変大きな成果になりました。私が日頃考えている「農業」、「開
発」、「援助」、「貧困」、「政治」、「人種」、「人間性」などに対する意見と現場での意見とを比較することができ、初めて自分の考えを取捨選択できたか
らです。
そして、現地の青年海外協力隊員訪問でも感じたことですが、現実に日本にあるような物や十分な現
金がない中でも、今できる具体策をやってみることの重要性を感じました。情報が行き渡り、グローバリゼーションという地球の縮小化で世界は満たされている
と思っていました。物事も、日本のように回りくどく、動いていくまでに時間を要するものだと思っていました。しかし、自分の行動は何も介さない。語弊のあ
る言い方かもしれませんが、頭でなく、口ではなく、体ができる、行動できるのが人間だと、改めて気付かされました。
今でも、何かを判断する時、現地の人々の笑顔を思い出しています。一見貧しい、原始的などと言わ
れるような彼らの生活、土と植物の葉で作った家、川での洗濯、古いタクシー、舗装されていない道路、どこでもやはり彼らの笑顔は輝いていました。“当たり
前”のことの違いは、私の生活に大きな影響を与えています。彼らの生活こそ効率的だと私は感じたからです。洗濯板での洗濯、ろうそくの利用、携帯電話を持
たないこと、日本では必須だと感じることを見直したら、本当に心身ともに楽になりました。
今後も彼らの生活を学ぶべく、交流を続けていきたいと思います。
文学部社会学科4年
今回のマダガスカルのスタディーツアーを通じて得たことは大きく分けて二つあります。
一つ目は、マダガスカルの教育制度について実際の現場を訪問して、その様子をリアルに感じることができたことです。
マダガスカル訪問の前に、現地の学校建設のプロジェクトに携わっていた方から、マダガスカルの教
育制度の概要についてお話を聞く機会を設けていただきましたが、それに加えて現地のアンブヒチャンガヌにある小学校を訪問することで、具体的にどのような
教育活動がなされているか知ることができました。
JOCV(青年海外協力隊)の隊員が派遣されている学校は、備品などが不足しているという課題を抱えつつも、村の人々と隊員の方が協力して作った野菜を売った資金を基に、外部の資金に依存しすぎない教育活動がなされていました。
同時に隊員の方は備品の充実していない学校で、アイデア勝負で教育活動に取り組んでいることが分かりました。マダガスカルの伝統的なスポーツの普及活動など、現地にあるものを最大限に利用した取り組みから、地域に見合った教育活動がなされている様子を感じ取れました。
二つ目は、現地の様子をビデオカメラで記録して、編集した動画をインターネット上で配信して、マダガスカルの様子を伝えることができたことです。
インターネットや事前学習の資料などでマダガスカルがどのような国なのか、事前に学びましたが、
現地の雰囲気は十分にはつかむことはできませんでした。そのため、私は体験したマダガスカルのリアルな様子を伝えるために、訪問中は現地の人たちの許可を
もらいながら、出来る限り撮影をしました。
バナナ市場では、なかなか言葉が通じず戸惑いましたが、現地の人たちの温かい対応を感じました。
また、現地の大学生との交流会では、私たちが日本の紹介をすると、それに対してたくさんの質問を受けました。彼らが日本語やアニメに興味を持っていること
から、日本にとってマダガスカルは決して遠い国ではないと実感しました。
動画を見てくれた人たちからも、さまざまな意見をもらえて参考になりました。私の動画からマダガ
スカルの様子を感じ取ってもらえたことは嬉しいことです。これからも、動画を少しでも多くの方に観てもらい、マダガスカルのリアルな様子を伝えていけるよ
うに取り組みたいと思います。
医学部保健学科看護学専攻教員
平成19年9月にマダガスカルを訪れ、主に医療保健の現状やJICAが行っている国際協力支援活動を見せて頂きました。
マダガスカルでは、栄養状態が不足し、不衛生な環境の中で暮らしをしている人々が多く、マラリア感染や呼
吸器感染症、下痢などで亡くなる割合が高くなっています。2006年人口白書によると、マダガスカル国民の平均寿命は56歳で、日本の男性79歳、女性
86歳と比べると大変短く、妊娠中や出産で亡くなる母親の割合を見ると、マダガスカルでは10万人中550人に対し日本では10人、5歳未満の子供が亡く
なる割合はマダガスカルでは1000人中118人に対し日本では4人と大きく異なっています。また、一人の女性が産む子供の数はマダガスカルでは平均
5.04人、日本では1.25人です。マダガスカルでは多くの子どもが産まれても亡くなる割合が高く、人々がより健康で長く暮らすには、生活環境を整えた
り、栄養を改善したり、医療サービスを充実させたりといった政策と国際協力支援が必要です。
JICAでは、母と子の健康支援を目指す母子保健の改善プロジェクトやエイズを予防する感染症対
策プログラムを実施していました。活動の主体となる専門家や海外青年協力隊の方たちは、マダガスカル人と現地語でコミュニケーションを交わしながら地方で
生活し、文化に溶け込み、直接母親や子どもに対する医療サービスを行ったり、医療システムについて検討したり、医療専門職の育成に関わっていました。人や
物資が不足していても、マダガスカルの住民や専門職の人たちに健康に関する正しい知識や医療保健の技術を伝えることで生活を少しずつ変化させていくことが
できます。マダガスカルはおだやかで働き者の方が多く、調和を大切にする風土がありました。JICAの支援はマダガスカルの人々の努力とともに、時間をか
けて成果を上げていくのではないかと感じました。
この度、研修を支援してくださった三菱銀行国際財団の関係者の方々には心よりお礼申し上げます。